なぜ地中海食は体にいいとされる?日本の食卓での始め方

なぜ地中海食は体にいいとされる?日本の食卓での始め方

■ 地中海食がよいとされる理由は、食事全体にある

地中海食が体によいとされる理由は、オリーブ油一つにあるわけではありません。野菜、果物、豆、全粒穀物、ナッツなどの植物性食品を土台にし、魚を取り入れ、赤身肉や加工度の高い食品を控えめにする。こうした食事全体の組み合わせにあります。

植物性食品が増えると、食物繊維を含む食品を取り入れやすくなります。油脂も、バターや脂身の多い肉へ偏らず、オリーブ油、ナッツ、魚などから選びやすくなります。特定の栄養素だけを増やす方法ではなく、毎日の食事を構成する食品の種類と頻度が変わるのが特徴です。

米国心臓協会(AHA)は、地中海食に一つの標準形があるわけではないと説明しています。地中海沿岸でも地域差がありますが、野菜、果物、穀物、豆、ナッツや種を多く取り、オリーブ油を主な油脂とし、魚や鶏肉を赤身肉より多く選ぶ点などが共通しています。

ここで扱う「地中海食」は、レストランの料理ジャンルとしての地中海料理ではなく、研究や健康情報で用いられる食事パターンです。パスタにオリーブ油をかけた一皿だけで決まるものではありません。

■ 心血管領域では、食事パターン全体を比べた研究がある

地中海食が注目される根拠の一つに、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントを調べた無作為化比較試験があります。よく参照されるのが、スペインで行われたPREDIMED試験とCORDIOPREV試験です。

PREDIMED試験

2018年に再掲載されたPREDIMED試験では、心血管疾患を発症していないもののリスクが高い55〜80歳の7,447人を、次の3群で比較しました。

  • エクストラバージンオリーブ油を補った地中海食

  • ミックスナッツを補った地中海食

  • 脂質を減らすよう助言を受ける対照食

追跡期間の中央値は4.8年です。心筋梗塞、脳卒中、心血管死を合わせた主要評価項目は、オリーブ油を補った群で3.8%、ナッツを補った群で3.4%、対照群で4.4%に発生しました。調整後のハザード比は、対照群に対してそれぞれ0.69と0.72でした。

CORDIOPREV試験

2022年のCORDIOPREV試験では、冠動脈疾患のある1,002人を地中海食群と低脂肪食群に分け、7年間追跡しました。心筋梗塞、血行再建、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患、心血管死を合わせた主要評価項目は、地中海食群で87人、低脂肪食群で111人に発生しました。

※ この試験の参加者は平均59.5歳で、82.5%が男性でした。すでに冠動脈疾患のある人を対象とした結果なので、年齢や健康状態が異なるすべての人へ、そのまま当てはめることはできません。

この二つの試験から言えるのは、条件の合う対象者では、地中海食の介入と主要心血管イベントの減少が結びついたということです。

■ 地中海食は、4つの柱で考えると分かりやすい

地中海食には地域差があります。毎日守る厳密な献立表ではなく、何を多めに選び、何を控えめにするかという方向で捉えると、普段の食事へ移しやすくなります。

取り入れる食品

見方

植物性食品を土台にする

野菜、果物、豆、ナッツや種、全粒穀物

一品ですべて取らず、一日の食事へ分けて置く

魚や鶏肉を取り入れる

魚介類、鶏肉、卵、乳製品

赤身肉や加工肉だけに偏らない

油脂の種類を選ぶ

オリーブ油、ナッツなど

今ある油脂の一部と置き換える

精製・加工度の高い食品を控えめにする

菓子、砂糖を多く含む飲み物、精製穀物、加工肉など

禁止ではなく、食事の中心や毎回の選択にしない

この形は、WHOが示す健康的な食事の基本原則とも重なります。WHOは、健康的な食事には十分さ、バランス、節度、多様性が必要であり、具体的な形は個人の条件、文化、地域で入手できる食品や食習慣によって変わるとしています。

地中海沿岸と同じ献立を再現することより、自分の暮らしで手に入る食品を使い、同じ方向へ食事を寄せていくほうが現実的です。

■ 日本の食卓なら、4つの置き換えから始められる

日本の食卓にも、地中海食と重なる食品はあります。日本動脈硬化学会の「The Japan Diet」は、減塩した日本食パターンとして、主食・主菜・副菜をそろえる考え方を示しています。魚、大豆、野菜、海藻、きのこ、果物、未精製穀類を取り合わせる点は、地中海食を日本で試すときの参考になります。

一度に献立を作り替える必要はありません。今の食事から一か所だけ変えてみます。

地中海食の方向

いつもの食事で試すこと

一食の例

植物性食品を増やす

野菜、豆、きのこ、海藻の一品を足す

おにぎりと主菜に、豆のサラダか野菜の小鉢を添える

魚や豆を選ぶ

肉料理の一部を魚や大豆料理へ替える

いつもの定食で、主菜を焼き魚や豆腐料理にする

未精製の穀物を選ぶ

主食の一部を麦や玄米、全粒粉パンへ替える

白米を麦ごはんにする、食パンを全粒粉パンにする

油脂を置き換える

バターや脂身などの一部をオリーブ油や無塩ナッツへ替える

バターを使う一品をオリーブ油で調理する


和食なら自動的に地中海食に近くなるわけではありません。汁物、漬物、加工食品を組み合わせると、食塩が多くなることもあります。日本の食材を生かしつつ、カロサポなどで食塩の傾向も一緒に眺めると、食事全体を捉えやすくなります。

■ オリーブ油は「足す」より「置き換える」

地中海食と聞いて、最初にオリーブ油を思い浮かべる人もいるでしょう。オリーブ油は地中海食を特徴づける食品ですが、今の食事へ無条件に加えるだけでは、食事パターン全体は変わりません。

量を増やすことが目的ではありません。たとえば、バターを使っていた料理の一部をオリーブ油にする、菓子を選んでいた間食の一部を無塩ナッツにするなど、すでにあるものとの置き換えで考えます。どの食品から油脂を取るかを見るのがポイントです。

■ ワインを飲み始める必要はない

伝統的な地中海食の説明では、食事とともにワインを飲む習慣が挙げられることがあります。しかし、健康のためにワインを飲み始める必要はありません。

AHAは飲酒と心臓の健康に関する解説で、現在飲んでいない人は始めないよう案内しています。赤ワインと心臓の健康の間に、因果関係が証明されているわけではないとも説明しています。

飲酒をしなくても、野菜、果物、豆、穀物、魚、油脂の選び方は取り入れられます。ワインを地中海食の必須条件として扱わないことが大切です。

■ 朝食、定食、コンビニでも一か所だけ変えられる

最初から一日三食を変えるより、よく食べる場面を一つ選ぶほうが試しやすくなります。

朝食なら、果物か無塩ナッツを一つ足す

いつもの朝食を残したまま、果物か無塩ナッツを一つ加えます。パンを選ぶ日は、次に買うときだけ全粒粉パンを試す方法もあります。一度に両方を変える必要はありません。

定食なら、主菜を魚か大豆料理にする

肉の定食が続いていると気づいた日に、焼き魚や豆腐料理を選びます。副菜を選べるなら、野菜、豆、きのこ、海藻を使った小鉢を一つ添えます。汁物や漬物が重なる日は、食塩の量にも目を向けます。

コンビニなら、選ぶ順番を決めておく

最初に魚、卵、大豆を使った主菜を一つ選び、次に野菜や豆の副菜、最後におにぎりや全粒粉パンなどの主食を合わせます。選択肢が少ない日は、三つすべてをそろえなくても構いません。

ナッツや大豆、魚介類などにアレルギーがある場合は、該当する食品を避けてください。腎臓病などで食事の指示を受けている人や治療中の人は、自己判断で大きく変えず、医師や管理栄養士へ相談しましょう。

■ 一食を残すと、自分の食事の傾向が見えてくる

地中海食を厳密に再現できたか、毎食を採点する必要はありません。「今週は魚を選んだ日があった」「豆や野菜の一品が自然に増えた」と後から気づければ、次に何を試すかを決めやすくなります。

カロサポでは、食事を写真またはテキストで残すと、カロリー・PFCに加えて食物繊維や食塩も記録されます。栄養素は日次・週次・月次のチャートで確認できます。

一日だけで結論を出さず、数日から一週間ほど眺めます。食物繊維が少なそうなら野菜か豆の一品を置く。肉料理が続いていると気づいたら、次の一食で魚か大豆料理を選ぶ。記録は正解を決めるためではなく、自分の食事を見つける材料になります。

カロサポアプリのダウンロードはこちらから

■ まとめ:まずは一つ足すか、一つ替える

地中海食がよいとされる背景には、植物性食品を土台にし、魚を取り入れ、油脂や加工食品の選び方を整える食事パターンと、心血管領域での研究があります。ただし、研究の対象や条件は限られており、特定の食品が健康を保証するものではありません。

日本で試すなら、地中海料理を毎日つくる必要はありません。次の食事で、どれか一つを選んでみてください。

  • 野菜か豆の一品を足す

  • 肉料理の一部を魚か大豆料理に替える

  • 白米や食パンの一部を麦、玄米、全粒粉パンに替える

  • バターなどの一部をオリーブ油に替える

一度に全部を変えなくて大丈夫です。一食を残して、数日後に眺める。その繰り返しから、自分の暮らしに合う形が見えてきます。